人気ブログランキング | 話題のタグを見る

センターの「松陰中納言物語」を現代語に直した。

正しい訳は、「現代語で読む『松陰中納言物語』」(山本いずみ著 和泉書院)という本が出ているから、そちらを見てもらうこととして、とりあえずは、問題の該当箇所だけを簡単に訳しておいた。

ほぼ逐語訳にしたんだが、敬語が煩わしくて面倒だった。例によって主語が省かれているから、それをいちいち補っておいたが、分かる人に蛇足だったかも知れん。

一応前記の訳本を予約したから、誤りがあれば訂正することにする。

でまぁ、学生さんはコピーしてもなんにでもご自由に。けれども、教員を生業になさっている方、学校・塾・予備校・出版社等の営利への使用は禁止です。まぁ使う人はいないと思いますが、この文章のすべての権利及び責任はブログ主が有します。


で、これが本文なんだが、新聞からスキャンしたから見づらい。拡大するはず。
センターの「松陰中納言物語」を現代語に直した。_d0150949_21461639.jpg



登場人物

右衛門督

女君

下総守・母親・弟君・右近


現代語訳

 翌朝、後朝(きぬぎぬ)の文をお贈りになるのも、どうにも手立てがおありにならないので、・・・(ア)いと心もとなく過ごし給ひけるに・・・たいそう気をもんで時を過ごしていらっしゃったところ、主人(下総守)が参上なさって、「昨日の浦風はお体に染み込みなさいませんでしたか?それがとても気がかりで。」と、申し上げなさったので、(殿は)『琴の音のことであろうか』とお思いになって、「素晴らしい色香でございました。唐琴でしょうか。見てみたいものですね。」とおっしゃると、意外なことに(琴を)取り寄せたのだった。(殿は琴を)入念にご覧になって、「あぁこれなら波の音にも負けないで美しく響いたのももっとものことだなぁ。」といって、箱にお入れになるときに、お手紙を紐に結び付けさせて、「これを、さきほどの方に。」とお置きになったので、(女君の部屋に)持って行った。女君は、(殿が)琴をお取り寄せになったのを、『どうなさったのかしら』とお思いになって、(戻された琴を)開けてご覧になると、・・・(イ)飽かざりし名残をあそばして・・・満ちたりないままに別れた思いをお書きになって、

「A 逢瀬を交わした後こそ物悲しいものです。逢いたくてもつい人目を気にしてしまって・・・。

   だから今夜は早く人を寝かせて」

とあったが、女君はどうしてよいやらお分かりにならない。幼い弟君が、「お客様のところに参上したいのですが、(差し上げるはずの)扇を海へ落してしまいました。代わりのをいただきたいのですが。」とおっしゃりにいらっしゃる。女君は『どうしてそのくらいたやすいこと』とお思いになって、扇の端に小さく(歌を)お書きになって、「この絵は念入りに美しく描きましたから、殿にお見せ下さいね。そうしたら、小さな犬をきっといただけるはずですよ。」とにっこり微笑みなさるので、(弟君は)喜んで、母君のところに参上なさって、「扇をいただきました。」とお見せになると、(母君はめざとく)歌を見つけなさって、『おかしいわねぇ』とお思いになる。(それでも)『やはりもう少し様子を見たいわ』とお思いになって、(弟君の)後について、屏風の陰から中の様子を覗いていらっしゃる。「この扇の絵をご覧になってください。姉君がこんなに綺麗に。」とおっしゃるので、(殿が見ると)ほんとうに・・・(ウ)いみじくこそ書きなしつれ・・・ことさらに美しく書きあげてあるなぁと思ってご覧になると、

「B 悲しみも忍ぶことも何も考えられません。別れた時の乱れた心では。」(とある。)

 (殿は)『あぁこれは今朝の琴の歌の返事だろう』とお思いになって、「この扇は私がいただいていいですね。(代わりに)犬を差し上げましょう。亰にたくさんいますから取り寄せて、その時にでも。」とおっしゃって、黄金で作った犬の香箱をお与えになって、「姉君にお見せ下さいね。」とおっしゃったので、(女君の部屋に)持ってお入りになるのを、母君はいっそうおかしいとお思いになって、「私にも見せなさいよ。」と取ってご覧になると、『・・・ X さればよ・・・あぁやっぱりだわ。昨日の琴の音を道しるべにお逢いになったんだわ。』とお思いになるが、『気づかないそぶりをしておきましょう』とお気持ちをお隠しになっている。弟君が姉君のところにいらしてお見せになると、「これは私がもらいますよ。」と取り上げなさって、(弟君は)「この犬を姉君に(と殿が仰いましたから)。」とおっしゃるので、「殿が犬をくださるはずという私の言葉が間違うはずはありませんからね。」と、蓋をとって中をご覧になると、

「C 別れた今朝は心が乱れたとしても、今宵また逢おうと言ったことは忘れてはいけませんよ」とある。

女君は惜しくはお思いになられたが、「人が見たら困る。」と掻き消しておしまいになる。
 母君は、『このまま黙っているのも心苦しいわ』と、右近をお呼びになって、「今夜は殿がおいでになりますよ。よく準備なさってね。わが一族の将来がかかっていますからね。」とおっしゃるので、右近は『あぁ思った通りだわ。今朝からの姫君の様子と言い、昨日の琴を途中から想思恋に弾きかえなさったのも、気がかりだったのよ』と思って、(それでも)『実は』とも言わずに、几帳をかけわたし、隅々まで塵を払っていると、(当の女君が)「こんな草深い庭の露をかきわけて訪れる人もいないのに、それほどまでにしなくてもいいでしょうに。」とおっしゃるので、「・・・Y 蓬の露は払はずとも、御胸の露は今宵晴れなんものを・・・蓬の露は払わなくてもお心のもやもやは晴れることでしょうねぇ」と微笑むと、女君はとても恥ずかしいとお思いになるのだった。



この話の女君は、嫁入り前だから、15~17歳くらいなんだが、こんなふざけたもんを高校生の試験問題にしてもいいのかねぇ。
名前
URL
削除用パスワード
by obakeland2008 | 2013-01-23 21:55 | 勉強 | Comments(0)

まっ、備忘録ですな。


by 草庵主人
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31